+「紙漉キハタノ」 プロジェクト 静謐な光とともに、穏やかに息づく。

  • Partner
    紙漉キハタノ ハタノワタル
  • Information
    80.53㎡|2LDK+WIC+SIC/北向き

慌ただしい日常の中でも、
心が緩む瞬間を感じられる。

流行がめまぐるしく移り変わる南青山で、
静かに時間が流れる住まいを目指したいと考えました。
この住まいは“静”の感覚をを大切にしています。
光と影、素材と時間が織りなす穏やかな空間。
和紙が柔らかく光を受け止め、日常をやさしく包み込む。
古くから続く職人の手仕事と、現代的なデザインが調和し、 変わらない美しさ=「不変」と、時代に寄り添う「普遍」を形にしました。
そこにあるのは、喧騒から一歩離れた安らぎ。
日々の暮らしに寄り添い、時を重ねても色あせない住まいです。

(パートナー)

PARTNER

+Context

  • 伝統工芸である和紙を作る工房の代表。原料である楮の栽培からはじまり、紙を漉き、その紙を使いプロダクト制作や建築空間の内装までを行う「紙漉キハタノ」の主宰でありながら個人名でアート制作を行う。昨年より心地よい空間作りを目指し、一級建築士事務所「午後二時設計室」も立ち上げ、和紙の提案を中心に空間全体をプロデュースをしています。国内外で活躍していますが、基本は昔からあるものを未来へ繋げる活動をしています。

プロジェクトパートナー

  • デザイン監修

    建築家二人暮らし

    ワンルーム45㎡の自宅インテリアを軸に、暮らしにまつわる”モノ、コト”など建築家である自分たちの価値観を軸に提案、情報発信するYouTubeチャンネル。「自分にとっての暮らしの豊かさ」をテーマにライフスタイルやモノ選び、街情報、自身が理想とする家具を制作し、販売プロセスを配信するなど、建築家夫婦でYouTubeを中心に活動しています。

(ストーリー)

STORY

静謐な光とともに、
穏やかに息づく。

「静」と「動」が響き合う、南青山

建物があるのは、ブランドショップの並ぶ「御幸通り」から一本奥に入った、静かな通り沿い。
かつてこのあたりは、江戸のころに格式ある武家屋敷が並んでいた場所です。
その落ち着いた気配を今に受け継ぎながら、戦後には本物を知る人々が集う街として、
そして1970年代には、世界のファッションとアートをリードする洗練の地として歩みを重ねてきました。
時を経てなお、この街には、静けさと創造のエネルギーが穏やかに共存しています。
それは住まう人だけでなく、訪れる人にとっても、誇りと心地よさをもたらしてくれるものです。

舞台となるお部屋は、北・南・南の三方向に開口を持ち、
80.53㎡という数字以上の広がりを感じさせる空間。
なかでも印象的で、かつこの居室のポテンシャルでもある北側に大きく開いた複数の窓から差し込む光です。
ですが北側からの光は安定した明るさがあるものの、
南からのふんだんな日差しと比べると薄暗くなります。
プロジェクトを進めていく中で北側からの光の活かし方に向き合いました。

流行の最前線に寄り添いながら、静けさの中で自分と向き合う時間を持つ。
この場所には、そんな暮らしのリズムがよく似合います。
忙しない日々を少し俯瞰して、ひと息つくように。
その想いを込めて、このプロジェクトは始まりました。

北側の光を活かす和紙との出会い。

安定した明るさがあるものの、薄暗い北側からの光をどう活かすか。
そして、穏やかな体験をどう生み出すか。
その答えを探る中で、私たちは“流行的なもの”ではなく“不変的なもの”に目を向けることにしました。
穏やかな体験には、移ろいに左右されない本質的な強さが必要だと考えたからです。

変わりゆくものと、変わらないもの。
その整理の中で浮かび上がったのが、「伝統工芸」という言葉。
そして、北側の光を活かす素材として出会ったのが、”和紙”でした。

出会いのきっかけは、設計者である「建築家二人暮らし」さんがハタノさんが都内での展示会に訪れたことでした。
在廊していたハタノさんと建築家二人暮らしさんがご自身の活動のことや、
本プロジェクトのお話をし、今回のプロジェクトメンバーで一度ハタノさんの工房を訪ねてみることになりました。

和紙という素材の深さを知る。

ハタノワタルさんは京都府綾部市で伝統的な「黒谷和紙」を手がける〈紙漉きハタノ〉の和紙職人。
工房を訪ね、話を重ねるうちに、和紙という素材がもつ奥深さに何度も驚かされました。

まず覆されたのは、「和紙は破れやすい」という思い込みです。
ハタノさんの和紙はしなやかで、驚くほど強い。
「木の皮の繊維が複雑に絡み合っているからなんです」とハタノさん。
千年以上前の文書が今も読めるのは、その和紙の耐久性の証だといいます。

さらに印象的だったのは、和紙と光との関わり。
一般的なビニルクロスが光を強く反射するのに対し、和紙は光を内側で受け止め、やわらかく拡散させます。
障子越しの光が空間を均一に照らすのは、まさにこの性質「乱反射」によるものです。
科学的に見ても、和紙は光を穏やかに整える素材といえます。

そして何より心に残ったのは、その先にある“循環”へのまなざしです。
和紙産業は、楮を育てる農家、紙を漉く職人、道具を作る職人――それぞれの技術が重なって成り立っています。
しかし生産量の減少とともに、それらの仕事の継承が難しくなっています。
ハタノさんは、自ら若手を雇い、地域と協力して楮を育て、道具職人にも制作を依頼しながら、その循環を守ろうとしています。
工房で私たちが目にしたのは、伝統を受け継ぎながら未来をつくる職人の姿でした。
和紙という普遍の素材を通じて、静かに、誠実に、次の時代への道をひらこうとしているのです。

(デザイン)

DESIGN

コンセプト

静謐な光と暮らす。

地域のメインストリートである「みゆき通り」や「表参道」には、洗練された人々が行き交い、街そのものが常に息づいています。
季節ごとに装いを変えるショーウィンドウや木漏れ日が揺れる街路樹、そこを行き交う人々の姿が、都市の「動」のエネルギーを感じさせます。
しかし、計画地へと続く通りをほんの一歩入ると、静けさと穏やかな空気が広がります。
周囲の喧騒を忘れさせる落ち着いた環境に包まれ、都市の活気と静けさが共存する場所といえます。
通りから一歩入った瞬間に感じられる、都市の中だからこそ味わえる「静」。
本計画では、この部屋の個性である「穏やかな光」を最大限に引き出し、その「静」の質を高めることで、住まい手の心身を解きほぐし、
日々の生活に心地よい安らぎを与える「静謐な光と暮らす住まい」を目指しています。

アプローチ

  • “静謐な光”環境をつくる間取り

    「窓と光の属性」を読む
    北側の掃き出し窓から入る光は、直射ではなく穏やかに回り込む安定した光。
    一方、東側からの光は朝のやわらかい光。
    方角ごとの光の特徴を丁寧に読み、空間の役割と接続させていきます。

    ■「北側メインのゾーニング」
    落ち着きが求められるLDを北側に配置することで、生活の中心となる空間が自然に静けさに包まれます。
    光が生活の質を支えるという考え方が軸にあります。

    ■「暮らし方に合わせて選択肢のある間取り」
    生活者の価値観に合わせて、 個室・LDの配置や関係性を調整できる柔軟性を確保。
    「光の質と過ごし方」を軸に選べる住まいの提案です。

  • “静謐な光”をつくる素材と光の色味

    和紙の仕上げ
    和紙の表面は微細な繊維によって光を乱反射し、
    空間に柔らかな明るさを与える素材です。
    強い反射ではなく、内側で光を受け止めることで
    “静けさ”を保ちながら空間を照らす特性をもちます。

    ■生成り+グリーンの色味
    自然素材と相性のよい淡い生成りを基調に、
    窓辺に近い場所にはグリーンの壁面をアクセントとして配置。
    外の緑(あお)と呼応しながら、室内を穏やかに彩る役割を果たします。

プラン

After

ディテール

  • 壁と天井の“和紙”の仕上げ

    紙の微細な繊維が光を乱反射し、空間に柔らかな明るさをもたらします。また、繊維が絡み合う和紙ならではの風合いと、ゆらぎを感じる重なりが、穏やかな表情を生み出します。手が触れる壁面の和紙には撥水コーティングを施し、質感を損なわず機能性も確保しています。

  • 生成り+グリーン

    自然素材と相性のよい淡い生成りを基調に、窓辺に近い場所にはグリーンの壁面をアクセントとして配置。外の緑(あお)と呼応しながら、室内を穏やかに彩る役割を果たします。墨を混ぜて作られた緑色は、淡く落ち着いた色味で、静かに住まいを彩ります。

  • 建具の存在を忘れさせる小さな工夫

    南側の水回りや主寝室を仕切る建具は、すべて戸袋に引き込む引き戸で構成しています。本来は建具の都合で不自然な凹凸が生まれますが、寸法にルールを設け、建具と無関係の壁にもあえて凹凸をつくることで、連続した自然な面に見えるよう整えています。

  • 外からの光を拡散する窓際の障子

    北側からの柔らかな光をやさしく拡散し、空間に穏やかな雰囲気をつくります。季節や時間帯によっては木漏れ日が障子に映り込み、風の強さや光のやわらかさを感じながら過ごすことができます。

  • 暮らしを彩る窓辺

    障子に沿って飾り棚を設えました。天板にはステンレスを採用し、空間を引き締めつつ、バイブレーション仕上げの為、和紙と同様にやわらかく光を受け止め、穏やかに反射します。オブジェを飾ったり、お気に入りの花器に枝物を添えたりと、季節や気分に合わせてしつらえを楽しめます。また、飾り棚の両端には電源を備えており、スピーカーやテレビ台としても利用できる実用性を持たせています。

  • 住まい手に選択肢のある間取り

    キッチンは敢えて独立させることで、リビング・ダイニングに置く家具の大きさやレイアウトに柔軟性を持たせました。
    また、リビングと繋がる個室は、ツインベットが置ける広さを確保しています。オープンな書斎や、プライベートなラウンジ、またはベットルームにと住まい手が選べるようになっています。

物件概要

  • 専有面積
    80.53㎡
  • 間取り/主開口
    2LDK+WIC+SIC/北向き
  • 建築年
    1980年
  • リノベ竣工年
    2025年
  • 販売状況
    販売中

(メンバー)

MEMBER

  • 企画・推進

    濵中亮輔

  • 建築ディレクション

    福田大輔

  • 販売担当・販売促進

    南湧太

  • リビタのメッセージ

  • パートナーからのメッセージ

    部屋を訪れた際に印象的だったのは、北窓から注ぐ柔らかな光。そして「紙漉キハタノ」による和紙で包み込まれ、光はより優しく、空間は穏やかなものへと変わりました。
    私たちにとっても、呼吸するような質感や時と共に深まるであろう表情は、伝統素材の豊かさを知る再発見になりました。素材に手をかけ暮らす時間は、日常に深い愛着をもたらします。移ろう光の情景と共に、住まう方が自由に居場所を見つけ、心安らぐ時間を紡いでいけることを願っています。

    建築家二人暮らし